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| 2010/07/14 |
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208話 金市場における ビフォー・アフター2010年5月 (その1) |
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08年秋の欧米を中心とした国際金融危機。そして付随して起きたこれまで
類を見ない景気の急激な悪化。当時はショック状態に陥った各国経済が困っ
たことに相互に影響しあい、 “負の共鳴現象” を起こし、さらなる悪化の
様相を見せることになった。そこで米国を中心に、各国ともに政府による緊
急避難的な財政出動が合意され、規模の大きな対応策が各国ごとに取られる
ことになった。
政府が予定外の出費を増やすということなので、当然ながら国債の増発によ
り財政赤字が膨らむことになる。すでに限界に近いところまで財政赤字が膨
らんでいる国にとっては、避けたいシナリオだった。それでも放置して景気
が世界的に底抜け状態になった場合、世界恐慌の再来という可能性も高まっ
たことから、赤字の拡大には目をつむり「(デフレ状態の行き過ぎた形であ
る)恐慌」を避けるほうを選ばざるを得なかったのである。
なぜ「大恐慌」の再来が意識されたのか。それは通常の景気循環のなかでの
景気の悪化ではなく、金融市場の崩壊をともなった、すなわち人間の体に例
えるならば血流が止まってしまったような状態の景気の悪化だったからだ。
もちろん中央銀行はそれぞれの国や地域で急激な資金放出を行っていた。そ
れは心停止一歩手前の状態に強心剤を打って蘇生させるようなものだった。
米FRBはじめ主要国の中央銀行は協定を結び資金(ドル)調達が難しくな
った国への資金の相互融通を行った(通貨スワップ協定)。それほど08年
秋から翌09年春にかけての世界経済の状況は綱渡り状態だったといえる。
逆に捉えるならば、それだけの危機は回復にも時間が掛るということであ
る。とりわけ金融システムの傷みを伴った景気後退は過去の例をみても回復
には相応の時間を要している。
その後の世界経済は、この世界各国の同時多発的対応策にさすがに底割れは
防がれ、低いながらも成長も回復することになる。
急激に作り出されたカネ余り環境は、株価の急反発に表れた。株価の戻りは
一定の心理的効果を示し、さぁこれから本格回復だ・・・・・という期待が
高まったときに、弱いところ(国)から綻(ほころ)びが始まった。それが
ギリシャ問題だった。
ギリシャ問題をきっかけに“政府債務の返済に対する疑念”すなわち「ソブ
リン・リスク」に対する懸念が頭をもたげることになる。ユーロ圏の中でも
財政的に弱いと目されたポルトガルやスペインなど南欧を中心に高まった市
場の不信は、一時は「ユーロ危機」とまで言われるほどの混乱を巻き起こす
ことになったのが2010年5月だった。
事態は時間の経過とともに相互作用的に広がった。
当初はギリシャ固有の問題と捉えられていたが、ユーロ圏内で発行されてい
る国債が域内の各国金融機関により相互に保有されている状況が明らかにな
ってくる。つまりギリシャ国債の信用問題は、価格が急激に値下がりするこ
とでそれを保有している域内他国の金融機関の信用問題に発展する図式が浮
上することになった。まさに一蓮托生。こうして市場の関心は、経済規模に
比して財政赤字が大きい国々とその金融機関の財務内容に連鎖的に注がれる
ことになった。弱いと目された国々の頭文字を取り「PIIGS(ピッグ
ス)」なる造語がメディアを賑わした。
市場の動揺が広がるなかで各国政府やECB(欧州中銀)も具体的対応策を
求められた。
じつはこの段階に至るまで、当局は市場に対し“ギリシャは問題ナシ”とい
う口先の対応に始終し、具体策を講じていなかった。EU(欧州連合)財務
相会合も頻繁に開催され、そのつど声明も発せられていた。しかし市場を安
定させることはできなかった。株価やユーロが下げ足を速め市場の緊張が強
度に高まった段階で、慌てて本格的な対応策を取ろうという動きがみられ
た。2010年5月に入ってからだった。
それでも具体策は最後までまとまらなかった。この事態がさらなる市場のパ
ニック的な反応につながることを恐れた米国は、オバマ大統領が直接独仏首
脳に電話をして決断をうながすということまでやった。
こうして難産の末にEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)は最大で7
500億ユーロ(約83兆円)の安定化基金の設立を決めた。同時にECB
(欧州中央銀行)はギリシャなど格下げされ売り込まれていた国の国債の市
場を通じた買い取りを決め、実行に移し始めた。5月9日から10日のこと
だった。
市場の予想した遥かに大きな基金を設けることで、まずは市場で広がった不
安心理の鎮静化に全力をあげることにしたわけだ。背景に米国のアドバイス
があったとされる。こうしたお膳立てのなかで償還を迎えたギリシャ国債の
借り換えは問題なく進むことになった。
こうした一連の流れの中で、5月、6月とドル建て金価格の史上最高値更新
が見られた。それは金ETF(上場投資信託)を介した資金流入によりもた
らされた。金ETFの最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高は、こ
の5月(108トン)、6月(52トン)の2ヵ月間で合計160トンもの
増加となり過去最高の残高を更新している。これは2009年春にヘッジフ
ァンドの大量買いに残高が急増して以来のものとなっている。
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎
※本レポートは執筆者の個人的な見解を述べたものであり、実際の投資に
あたってはお客様ご自身にてリスクをご判断ください。
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